【106万円の壁】撤廃で何が変わる?厚生年金加入要件の見直しを詳しく解説!高時給の職場選びも新たな焦点に

パートや短時間労働者が抱える「106万円の壁」

これは、年収106万円を超えると厚生年金に加入しなければならず、保険料負担が増えるため、働きすぎると手取り収入が減るジレンマを生んできました。

しかし、厚生労働省が年収要件を撤廃する方針を打ち出したことで、多くのパート・アルバイト労働者にとって、働き方の選択肢が広がる見通しです。

また、老後の年金受給が充実するなどのメリットも期待されています。

一方で、週20時間の勤務要件はそのままであるため、「社会保険未加入のまま働きたい」人にとっては、高時給の職場を選ぶ重要性が増しています。

106万円の壁とは何か?
週20時間の勤務要件が残ることで労働者の選択肢はどう変わるのか?
この影響を受けるのはどんな人か?

本記事では、この「106万円の壁」の撤廃がもたらす影響、具体的なメリット・デメリット、新たな選択肢としての高時給職場選びについて詳しく解説します。

106万円の壁とは?

「106万円の壁」は、パートや短時間労働者が厚生年金に加入する際の収入要件です。

この制度のもとでは、年収が106万円を超えると厚生年金への加入が必要となり、保険料の支払いが生じます。

そのため、収入が増えると保険料の負担がかかり、手取りが減ることを懸念して労働時間を制限する「壁」として認識されてきました。

このたび、厚生労働省はこの106万円の年収要件を撤廃し、勤務先の従業員数や年収に関わらず、週20時間以上勤務するパートや短時間労働者が厚生年金に加入できるようにする方向で調整を進めています。

週20時間の壁が残ると……高時給な職場選びとその影響

年収要件が撤廃され、年収を気にせず働ける環境が整いますが、「週20時間以上の勤務」という条件は残されます。

そのため、厚生年金に加入せずに働きたい場合は、20時間未満の勤務で高時給の職場を選ぶことが重要です。

特に短時間での高収入を望む労働者にとっては、このような選択が効率的な働き方となるでしょう。

しかし、この新しい働き方の選択肢が広がる一方で、中小企業にとっては深刻な影響が予想されます。

特に高時給を提供できる大企業や有名企業に人材が集中することで、中小企業や零細企業の人材確保がさらに難しくなる可能性があります。

多くの中小企業では、厚生年金の保険料負担を賄うだけの余裕がないため、人件費がかさむことで経営が圧迫される懸念も生じています。

106万円の壁撤廃が影響するのはどんな人?

パートタイム労働者・アルバイト

現在は106万円の年収要件を理由に労働時間を抑えている人々が、時間を気にせず働けるようになると言われています。

しかし、週20時間の壁はそのままなため、働き控え解消は全く期待できないと考えられるでしょう。

中小企業や零細企業の従業員

従業員数51人未満の企業にも厚生年金加入が適用されるため、これまで年金に加入できなかった中小企業のパートタイム労働者も対象になります。

これにより、労働者はもちろん、企業側の負担が爆発的に増えることが懸念されています。

「106万円の壁」撤廃によって変わること

歯が痛い

以下の表は、現在の条件と変更後の条件の違いをまとめたものです。

項目現行制度新制度(予定)
年収条件年収106万円以上年収要件撤廃
勤務先の規模従業員数51人以上の企業企業規模を問わず全ての企業
労働時間週20時間以上週20時間以上
新たな加入対象者の見込み既存の対象者新たに約200万人が対象

では、新たに加入した労働者の生活がどう変わるかも見ていきましょう。

「106万の壁」撤廃によるメリットとデメリット

老後の年金受給が手厚くなる(メリット)

短時間労働者が厚生年金に加入することで、老後の年金受給額が増えることになります。

現行では、年収を抑えて扶養に入ることで厚生年金加入を避けるケースが見られましたが、制度変更により、多くの労働者が厚生年金の恩恵を受けられるようになります。

労働時間の調整が不要になる(メリット)

これまでは年収106万円を超えないように労働時間を制限するケースが多く、労働者にとって「働きすぎると手取りが減る」というジレンマがありました。

年収要件の撤廃により、労働時間を気にせず働ける環境が整います。

保険料負担が生じる(デメリット)

106万円の壁を超えることで厚生年金に加入する場合、労働者と雇用主がそれぞれ保険料を負担する必要が生じます。

負担額が増えることで、場合によっては手取り収入が3割程度減少する可能性もあります。

以上は労働者視点でのメリット・デメリットですが、労働者の社会保険料の半分は企業負担であるため、企業へのダメージは労働者以上に深刻であると考えられます。

実際にかかる保険料のシミュレーション

年収現行(厚生年金加入なし)新制度(厚生年金加入あり)
80万円保険料なし保険料なし
106万円保険料なし約10万円
150万円保険料なし約15万円

※実際の保険料は労働者の年収や企業の保険料負担割合によって異なります。

年収要件撤廃と103万円の壁の関係

現在、政府は国民民主党を中心に、パートやアルバイトが所得税を支払う基準である「103万円の壁」の見直しを検討し、この基準を178万円に引き上げる案が出されています。

所得税の発生基準が引き上げられれば、低所得者の負担が軽減されることが期待されます。

しかし、週20時間以上の勤務で厚生年金への加入義務が発生するため、たとえ103万円の壁が引き上げられたとしても、「働き控え」の問題が解消されない可能性があります。

所得税が発生する基準が引き上げられれば、負担が軽減されることも期待されていますが、今回の106万の壁撤廃により、103万の壁見直しの効果が抑制されることは明らかでしょう。

まとめ:制度改正がもたらすメリットとデメリット

メリットデメリット
老後の年金受給が手厚くなる保険料負担が増え得る
年収を気にせず働ける労働時間制限はそのままなため、低賃金な企業に人が集まりにくくなる
パートやアルバイトでも厚生年金に加入可能に企業側も保険料負担が増加
収入要件が撤廃され、条件が分かりやすくなる扶養の範囲を超えることで手取りが減少する可能性

厚生年金の年収要件が撤廃されにも関わらず、労働時間の制限がそのまま残ることへ、多くのパートタイム労働者が、より高い時給の地域・職場を探し求める仕組みへと変わります。

今後の法案提出の動向を注視しつつ、自分の働き方や収入に合わせて対策を検討していくことが重要です。